令和元年度 木材製品の消費拡大対策事業のうち
CLT建築実証支援事業のうち CLT 等木質建築部材技術開発・普及事業

DLT-コンクリート複合梁の強度性能の確認

事業名:木ダボ積層材DLT(Dowel Laminated Timber) の普及に向けた性能評価と普及活動
事業期間:令和2年5月9日~令和3年2月19日

DLT-コンクリート複合梁の強度性能の確認1(予備試験)試験概要

  • S造、RC造のデッキプレートの代替材として、DLTの用途拡大を目的にDLTの上にコンクリートを打設した、DLT‐コンクリート複合材(DLT-Concrete Composite ;以下DLT-CC)の曲げ強度を確認しました。

  • DLT-CCの曲げ試験に先立ち、木-コンクリート複合材(Timber-Concrete Composite;以下TCC)の挙動を把握するため、ウェブに集成材E105F300を使用し、上フランジにコンクリートt50mmを打設したT型梁で予備試験を行いました。

試験体仕様

表3.3‐1 試験体の仕様
試験体の仕様

ウェブ材:オウシュウアカマツ集成材 E105F300異等級対称構成
上フランジ材:現場打設コンクリート 配合強度24‐18‐20。割れ止め用φ6mm#150入り
せん断キー:パネリードPX8×110 斜め打ち
コンクリートの水分によるDLTの本体への影響を排除するため、DLT上面に12mmの合板を設置し、合板上からせん断キーのビスを打設

試験体姿図
図3.3‐1 試験体姿図

ひずみゲージの設置

梁のスパン中央より450mmフランジ上面 中央1箇所(①)、端部1箇所(②)、下面に2箇所(③、④)、ウェブ側面 上部に2箇所(⑤、⑥)、下部に2箇所(⑦、⑧)設置しました。木部は節を避けてひずみゲージを接着し、各位置に生じる曲げひずみを計測します。
ひずみゲージ:PFL-30-11 株式会社東京測器研究所

ひずみゲージ位置図
図3.3‐2 ひずみゲージ位置図

試験の実施概要

  • a.試験内容実大TCC梁の曲げ試験(予備試験)

  • b.試験実施⽇2020年10月1、2日

  • c.試験場所群⾺県林業試験場
    実⼤強度試験機:SAH-100 前川試験機(株) 定格最⼤試験⼒:曲げ500kN

  • d.試験方法

    • ⽀点間距離 2,100mm(TCC105)、3,300mm(TCC180、210)、載荷速度 5mm/min

      簡易試験⼿順
      • ① 曲げ試験機の枕⽊をピンで固定し、⽀点間距離を調節します。

      • ② 変位計を取り付け、試験体位置を試験機のX,Y 軸共に合わせ、中⼼を確認後に加力開始します。

      • ③ 試験体が曲げ破壊に達するまで加力を継続します。

荷重載荷および変位計配置図
図3.3‐3 荷重載荷および変位計配置図

試験結果

  • 写真3.3‐1 TCC105 加力前
  • 写真3.3‐2 TCC105 試験後
  • 写真3.3‐3 TCC180 加力前
  • 写真3.3‐4 TCC180 試験後
  • 写真3.3‐5 TCC210 試験後
  • 写真3.3‐6 破壊状況 拡大

DLT-コンクリート複合梁の強度性能の確認2試験概要

  • 集成材をウェブ材としてTCCとした予備試験で、合成効果による強度および剛性の向上が確認されました。次にウェブ材をDLTとし、フランジにコンクリートを打設したDLT‐コンクリート複合材(DLT-Concrete Composite;以下DLT-CC)の曲げ性能を確認します。

試験体仕様

  • 試験体の仕様一覧を表3.4-1に示します。上フランジのコンクリート厚さは予備試験と同じく50mmとし、ウェブ材は幅30mmのスギKD材を積層したDLTとしました。コンクリートとウェブ材を接合するせん断キーには、パネリードPX6×110を斜め打ち@200しました。

  • ウェブのせいを105mm、150mmの2種類、せん断キーに用いるビスの配列を1列@200、2列@200の2種類を設定しました。

  • 試験体図を図3.4.1、図3.4.2に示します。DLTの長さは4,000mm、支点間距離を3,600mmとしました。曲げ試験の結果から、最大荷重、初期剛性を求めます。

  • 試験で使用するウェブ材は、群馬県産スギKD材を用いました。予め1枚毎にヤング係数(縦弾性係数)を計測して区分し、さらに積層後のコンクリート打設前の状態で、弾性範囲内の荷重を加えて曲げヤング係数を計測しました。ウェブとコンクリートの間には、厚12mmの型枠合板を設置しています。

表3.4‐1 試験体の仕様
試験体の仕様
試験体姿図
図3.4‐1 試験体姿図
試験体断面図(せん断キー1列、2列)
図3.4‐2 試験体断面図(せん断キー1列、2列)

試験方法と計測計画

  • a.試験内容実大DLT-CC梁の曲げ試験

  • b.試験実施⽇2020年11⽉25、26、27、30⽇、12月1日

  • c.試験場所群⾺県林業試験場
    実⼤強度試験機:SAH-100 前川試験機(株) 定格最⼤試験⼒:曲げ500kN

  • d.試験方法

    • ⽀点間距離 3,600mm、載荷速度 5mm/min

      試験⼿順
      • ① 曲げ試験機の枕⽊をピンで固定し、⽀点間距離を調節します。

      • ② 変位計を取り付け、試験体位置を試験機のX,Y 軸共に合わせ、中⼼を確認後に加力開始します。

      • ③ 試験体が曲げ破壊に達するまで加力を継続します。

  • e.計測計画

    • 巻取り変位計を、荷重位置2か所およびスパン中央のDLT中央下端に計3か所設置し、コンクリートとDLTとの境界面における水平方向の相対変位を支点位置で計測しました。

    • ひずみゲージを、梁のスパン中央より450mmの位置に、フランジ下面に2箇所(④、⑤)、上面 に3箇(①、②、③)、ウェブ側面 下部側面に2箇所(⑥、⑦)、下面に3箇所(⑧、⑨、⑩)に節を避けて接着し、各位置に生じるひずみを計測しました。
      ひずみゲージ:PFL-30-11 株式会社東京測器研究所

荷重載荷および変位計配置図
図3.4‐3 荷重載荷および変位計配置図
ひずみゲージ位置図
図3.4‐4 ひずみゲージ位置図

ウェブ材およびDLTの曲げヤング係数

  • ウェブ材のヤング係数測定結果一覧を表3.4-2~表3.4.5に示します。動的ヤング係数は打撃法での測定値、静ヤング係数はウェブ材の曲げ試験から得た曲げヤング係数です。静ヤング係数の平均値は、DLT試験体を構成する7材の平均値です。

    表3.4‐2 ウェブ材のヤング係数(1)
    ウェブ材のヤング係数(1)
    表3.4‐3 ウェブ材のヤング係数(2)
    ウェブ材のヤング係数(2)
    表3.4‐4 ウェブ材のヤング係数(3)
    ウェブ材のヤング係数(3)
    表3.4‐5 ウェブ材のヤング係数(4)
    ウェブ材のヤング係数(4)
  • ウェブ材のヤング係数測定結果一覧を表3.4-2~表3.4.5に示します。動的ヤング係数は打撃法での測定値、静ヤング係数はウェブ材の曲げ試験から得た曲げヤング係数です。静ヤング係数の平均値は、DLT試験体を構成する7材の平均値です。

    1)せい105mmの場合

    2)せい150mmの場合

    ここで、

    表3.4-6、3.4-7にDLTの曲げヤング係数の値を示します。表内の曲げヤング係数は、次式で算出しています。

    ここで、

    表内の素材はウェブ材を示します。DLT素材(7枚)の平均値は、表3.42~表3.4‐5の静ヤング係数平均値に等しいです。表内の変位計位置の素材の曲げヤング係数は、DLTの曲げ試験で、巻取り変位計を取り付けた素材の静ヤング係数です。

    DLTの曲げヤング係数は、素材の曲げヤング係数平均値と比較すると2~5%程度の違いとなっています。105せいの場合はDLTの値が素材平均値よりも高く(表3.4‐6)、150せいの場合ではDLTの値が素材平均値を下回る結果となりました(表3.4‐7)。

    150A-1試験体の、変位計を取り付けた素材のヤング係数がDLTの曲げヤング係数と比較して、22%大きい値であるのに対して、素材の平均ヤング係数は5%大きい値となっています。このことから、木ダボによる各素材の鉛直変位を平均化する効果が確認できます。

    本試験ではDLT試験体毎に素材のヤング係数を揃える方針としていましたが、これを任意の組み合わせとした場合は、このヤング係数を平均化する効果が高まると考えられます。

    表3.4‐6 DLTのヤング係数(1)
    DLTのヤング係数(1)
    表3.4‐7 DLTのヤング係数(2)
    DLTのヤング係数(2)

試験結果

  • 写真3.4‐1 DLT-CC 曲げ破壊試験 全景
  • 写真3.4‐2 DLT-CC 105 A1 加力後 破壊状況
  • 写真 3.4‐3 DLT-CC 105 A2 加力後 破壊状況
  • 写真3.4‐5 DLT-CC 150 B1 加力後 破壊状況
  • 写真3.4‐6 DLT-CC 150 C1 加力後 破壊状況