令和4年度 木材製品の消費拡大対策のうち
CLT建築実証支援事業のうちCLT等木質建築部材技術開発・普及事業

DLT壁の加熱試験②
(載荷加熱による本試験)

事業名:木ダボ積層材(DLT)の普及に向けた性能評価と普及活動
事業主体:株式会社 長谷萬

試験目的

DLT壁の加熱試験①の結果をふまえ、壁炉によるDLT壁の載荷加熱試験により、45分準耐火構造の防火性能を有することを確認します。

試験概要

1) 試験体の仕様

試験体は3,500mm(W)×3,000mm(H)のDLT外壁構造の2体(表7)としました。室内側はDLT現わし、外壁側は防火性能を有しない金属サイディングとしました。

表7 試験体の仕様一覧
表7 試験体の仕様一覧
DLTのラミナには群馬県産スギ材 30×105 JAS乙種2級同等品とし、小井土製材(株)にて乾燥後の粗挽き材を含水率15%以下、比重0.38以下で重量選別した素材を使用しました。

2) 試験体

試験体Aは金属サイディング側からの加熱。試験体BはDLT現し側から加熱とし、金属サイディングを省略し、構造用合板(t12㎜)の上貼りのみとしています。
試験体の姿図を図5、図6に示します。柱は木被覆材をビス止めし、柱両側面に座屈拘束のDLTをビス固定しました(図7)。

  • 図5 試験体A 姿図
    図5 試験体A 姿図
  • 図6 試験体B 姿図
    図6 試験体B 姿図
図7 柱および補強DLT
図7 柱および補強DLT

試験方法

1) 加熱方法

試験は(公財)日本住宅・木材技術センター壁炉にて、炉内熱電対により測定した温度(加熱温度)が(公財)日本住宅・木材技術センター制定「防耐火性能試験・評価試業務方法書」に規定する次式による標準加熱曲線に沿うよう制御しながら試験体の片面を45分載荷加熱し、加熱終了後は速やかに脱炉し、注水消火しました。

2) 載荷荷重

試験では柱に長期許容応力度に相当する応力度が生じるように載荷しながら試験します。載荷する荷重量は、構造耐力上主要な部分である柱について、平成13年国土交通省告示第1024号に基づき、次表(表8)に示す各式から算出しました。

表8 載荷荷重の計算
表8 載荷荷重の計算
注)材料強度は、平成12年国土交通省告示第1452号(木材の規準強度Fc、Fb及びFsを定める件)に基づく。

3) 測定項目

常時垂直荷重を支持する壁 として以下の項目を測定しました。
・最大軸方向収縮量及び最大軸方向収縮速度
・非加熱側への火炎の噴出
・非加熱面での発炎の有無
・非加熱側の壁の表面温度
・火炎が通る亀裂等の損傷の有無

図8 載荷加熱炉 正面図
図8 載荷加熱炉 正面図

試験動画

試験体A 壁炉での載荷加熱試験

試験体B 壁炉での載荷加熱試験

試験写真

1)試験体A 試験状況

2)試験体B 試験状況

試験結果

試験場所公益財団法人日本住宅・木材技術センター

試験日令和4年12月26日 試験体A(45分載荷加熱)
令和4年12月27日 試験体B(45分載荷加熱)

加熱試験終了後、加力治具を解体・脱炉し放水消火を行いました。加熱終了、脱炉・注水消火まで試験体Aでは約9分、試験体Bでは約10分経過しました。
試験結果を表9に示します。

表9 試験結果
表9 試験結果
※試験体Aでは煙漏出部を耐火接着剤で埋めており参考とします。

1) 試験体A

  • 図9 試験体A 炉内温度
    図9 試験体A 炉内温度
  • 図10 試験体A DLT・柱内部温度
    図10 試験体A DLT・柱内部温度
  • 図11 試験体A 合板裏面温度(非加熱側)
    図11 試験体A 合板裏面温度(非加熱側)
  • 図12 試験体A 合板表面温度(加熱側)
    図12 試験体A 合板表面温度(加熱側)
  • 図13 試験体A DLT・柱裏面温度(非加熱側)
    図13 試験体A DLT・柱裏面温度(非加熱側)
  • 図14 試験体A 載荷荷重と変位量
    図14 試験体A 載荷荷重と変位量

2) 試験体B

  • 図15 試験体B 炉内温度
    図15 試験体B 炉内温度
  • 図16 試験体B DLT・木材内部温度
    図16 試験体B DLT・木材内部温度
  • 図17 試験体B 合板裏面温度(非加熱側)
    図17 試験体B 合板裏面温度(非加熱側)
  • 図18 試験体B 合板表面温度(加熱側)
    図18 試験体B 合板表面温度(加熱側)
  • 図19 試験体B 柱表面温度(加熱側 被覆材裏面)
    図19 試験体B 柱表面温度(加熱側 被覆材裏面)
  • 図20 試験体B 載荷荷重と変位量
    図20 試験体B 載荷荷重と変位量

試験結果の考察

1) 金属サイディング仕様のDLT壁の防火性能について

・試験体Aでは、加熱開始 約5分経過位からDLTパネル接合部の近傍ラミナ間から煙が漏出しました。火炎貫通ではないので、23分頃に耐火接着剤で埋め加熱を継続しました。

・試験結果より、柱の鉛直方向の変位、非加熱面の温度上昇は規定値以下で、非損傷性、遮炎性、遮熱性は確認できましたが、火災時に煙漏出がある場合、安全避難が困難となる可能性があることから、改善すべき課題が明らかとなりました。

・試験体Bは、45分加熱後の残存断面を約72mm確保でき、非損傷性、遮炎性、遮熱性が確認できました。

2) 煙の漏出部について

試験体の組立時にパイプクランプを使用してDLTパネルを引き寄せ接合しており、パイプクランプの締め込み時にパネルが反り、接合部近傍のパネルの裏面側(非加熱側)のラミナ間で通気隙間が生じたと推測されます。

3) 下地合板について

金属サイディング側からの加熱では予備試験の結果通り、加熱後15分程度頃から木材内部温度の上昇がみられ(図10)、金属サイディング、縦胴縁、合板12mmにより12~15分程度の防火性があり、外壁下地合板としては構造耐力も考慮すると9mm以上の合板であればよいと考えます。