小型試験炉で1m×2m程度の試験体にて無載荷加熱試験を実施しました。
試験目的
以下の項目についてDLTの防火性能を確認します。
積層材の隙間からの燃え込みの有無(遮炎性能の検証)
積層材の燃焼性状の確認(遮熱性能の検証、炭化速度の検証)
木ダボの燃焼の有無(非損傷性の検証)
試験概要
1) 試験体の仕様
試験体は図1で示すDLT床としました。DLTパネルの組立精度、経年変化によるラミナ間の隙間拡大を想定し、試験体には予め3mm、5mmの隙間を設けました。試験体は表2の4体としました。
試験方法
1) 加熱方法
試験は有効加熱範囲1,000㎜×2,000㎜の(一財)ベターリビング小型加熱炉(写真1~写真3)にて、炉内熱電対により測定した加熱温度が(一財)ベターリビング制定「防耐火性能試験・評価試業務方法書」に規定する次式による標準加熱曲線に沿うよう制御しながら、DLT床の下面を加熱面として試験体Aは60分間、試験体B、C、およびDは45分間加熱しました。加熱終了後は速やかに脱炉し、注水消火しました。
2) 測定項目
① 加熱温度
② 内部温度、裏面温度
試験結果
試験実施一般財団法人ベターリビング つくば建築試験研究センター
試験日8月18日 試験体A、試験体B
8月19日 試験体C、試験体D
加熱試験終了後、脱炉し注水消火を行い、消火後の残存断面を目視観察しました。試験終了後、注水消火まで試験体A:8分、試験体B:11分、試験体C:9分、試験体D:11分経過しました。
試験結果を表3に示します。
試験結果の考察
1) DLTの燃焼性について
小型炉での試験結果より、DLTのラミナの積層面の燃焼はほとんどなく、ラミナの積層面側に若干燃え込み進む凸型の燃焼が確認できました。これは、DLTはラミナの積層時に密着していますが、接触面は接着していないのでラミナのねじれや反り等によりわずかに隙間が生じるためと考えられます。
合板上貼りが無い試験体Dにおいても、隙間部分のラミナでは隙間部は燃焼が大きいものの、他の部分のラミナの燃焼は合板上貼りが有る試験体と同様で、DLTのラミナ積層面の燃え込みはわずかでした。
経験的に大断面木材の炭化速度は0.6~0.7mm/分とされており、木材断面の大きい材や、比重の大きな材では木材内部への熱の伝わり方が遅く、炭化速度が小さくなります。木材内部温度測定結果より木材内部温度が260℃を超えた時間で炭化速度を計算しました(表4)。
2) 45分加熱時の予想残存断面について
表4より、炭化速度をスギ 0.8mm/分、ヒノキ0.64mm/分とすると、45分時の断面減少量はスギで36.0mm、ヒノキで28.8mmとなります。同様に1時間時の断面減少量の予測は、スギで48.0mm、ヒノキで38.4mmとなります。
この断面減少から推測すると、105mm厚(試験体BおよびC)であっても、45分加熱時に木ダボまで燃えない、36mm>42.5mm((105-20)÷2)未満と推測されます。ただし、燃焼領域先端から内部は距離に応じて内部温度が上昇することで、熱の影響によりヤング係数が減少します。
3) 隙間の開きと床上合板の影響について
合板上貼りがある試験体A、B、Cでは、5mm程度の隙間があっても顕著な燃え込みは起こりにくいことが確認されました。これは合板により隙間部に熱侵入(対流)が生じにくいためと予想されます。
一方で、合板上貼りがない試験体Dでは、DLTのジョイントや積層材同士の隙間が開くと、一般部と比較して1.5倍以上燃え込む傾向がありました。この結果から、DLTを天井現わしの床や屋根として使用する場合では、水平構面の確保と併せ下面からの火災危険性への配慮の観点から、上面側に構造用面材の上貼りや、根太を隙間部に配置するなど、DLT床の上下がつながらない設計が望ましいと言えます。
また、試験体Dでは3mm、5mmmの隙間部には、加熱面から70mmの位置に雇い実(スギ 9mm×20mm)を入れ、雇い実の有無での燃焼性を比較したところ、雇い実まで燃焼していません。これは、雇い実により対流が抑制されたためと考えられます。雇い実や実加工をDLTパネルのジョイントや躯体とのジョイント部に活用することで、防火性能を損ねない接合が可能といえます。